エコロジーなダイヤモンドの未来を創る

David Block(サリネ CEO)の独占インタビューが『New Jewely』誌に掲載されました。

 

アンゴラやスラト(インド)のダイヤモンド取引所開設、サウリモ・ダイヤモンド・ハブの設立、ドバイでの記録的なダイヤモンド取引、イスラエルをはじめとする経済圏との戦略的提携など、ポストコロナを見据えてダイヤモンド業界は大きく変わりつつあります。このような現状でテクノロジーが果たす役割をどのようにお考えでしょうか。また、業界のゲームチェンジャーとなり得る最先端のテクノロジーとはどのようなものでしょうか。

進化し続けるテクノロジーは、ダイヤモンド・パイプラインを取り巻く業界に新たなチャンスをもたらしています。この30年でサリネのテクノロジーは製造業界に広く受け入れられ、ダイヤモンドの製造、特にその中流において欠かせないものになりました。ここ2~3年はパイプラインの両端(生産者と小売店)でもテクノロジーの活用が急速に進んでいます。今後は特定の分野ではなく、パイプライン全体を効率化するためにテクノロジーを統合していくことが求められるでしょう。パイプラインで生成されたデータをインテリジェントに使用・分析することで新たな価値を生み出せることは広く知られています。取得したデータを今までとは違うアプローチで分析・応用することで生産性を高め、新たな価値を付加するトレーサビリティはその良い例です。
現在のダイヤモンド・パイプラインはほぼ2年分の在庫(「デッドストック」)が関連企業の経営を圧迫するなど、さまざまな場所で目詰まりを起こしています。では製造業者が小売店のニーズ、つまり「売れる商品」を把握しているシナリオではどうでしょう。この場合、製造業者は大雑把な予想ではなく、実需に合わせてほぼリアルタイムで製造を調整することができるので供給の過不足がなくなります。一方、小売店は製造中の商品とその納品予定が分かるので余裕を持って販売計画を立てることができます。このシナリオはかなり単純化されていますが、供給側と需要側双方にメリットがあることが分かります。個人的にはこの「理想的な」シナリオが実現すると楽観的に考えていますが、そのためには、各企業が自社の利益だけでなく、より大きな価値のために業界を上げて協力・連携していくことが大切です。

Clarity tech look

 

世界初となる鑑定書付きのダイヤモンド原石レポートを発表されましたが、これはダイヤモンド産業とその成長にとってどのような意味があるとお考えでしょうか。また、Mazalit社との業務提携と同社を選んだ理由について詳しくお聞かせください。

ダイヤの原石は高価な資産ですが、その評価方法については業界外ではほとんど知られていません。これまでの手作業で主観に基づく方法では評価に一貫性がないため、原石を担保に資金調達をするのは困難でした。しかし、サリネのテクノロジーを使えば、原石の豊富な情報と研磨済みダイヤの取引価格データを組み合わせて原石の価値を客観的かつ正確に評価することが可能です。これはダイヤの原石による資金調達とその保険の両方に大きなインパクトを与えるものです。この新しいサービスをリリース・展開するにあたって、ダイヤの原石を担保に運転資金を貸し出しているMazalit社は理想的なパートナーです。同社は適格金融機関としてイスラエル当局による厳しい規制の下でも顧客の在庫を「有効活用」し、物流サービスと有益な融資を提供することでその事業拡大を支援しています。Mazalit社の融資能力を強化し、リスクを軽減することができる今回の提携はすべての当事者(「サリネ」、「Mazalit」、「共通の顧客」)にとって大きな意味を持ちます。


先日Advisor® 8.0をリリースされましたが、このソフトウェアを利用することでどのような人的ミスを避けることができますか。

Advisor® 8.0は業界標準の原石プランニングを行うための最先端のソフトウェアです。ここ数年、小さな原石にもテクノロジーを使う傾向が強くなっています。今回のバージョンアップでは、年間およそ9億個ともいわれる極小原石の提供価値を改善することに焦点を当て、小さな原石の切り出しに役立つ様々な機能を追加しました。これらの機能が大きな原石にとっても有益なことは言うまでもありません。小さな原石については、生産性の向上と自動化に重点を置き、オフライン(営業時間外や休日)操作、夜間自動処理、システム障害からの自動復旧、サイクルの短縮などを実現する一方、大きな原石については、より高度なアルゴリズムで適切なプランニングとその実行を可能にし、価値を高めることに重点を置いています。Advisor® 8.0には、高度な非対称プランニング、輝きの最適化プランニング、21種類のファンシーシェイプ、3つのダイヤを最適な形で切り出す「トリプレット」自動プランニングなど、原石のプランニングと製造プロセスに役立つ様々な機能が搭載されています。その他にもプランのサポートと作業時の転送エラー削減のために、切断方向をマークしたり、研磨を避ける箇所を検出したりする機能もあります。この先進的な原石プランニング・ソフトウェアが価値の低い小さなダイヤから高価なダイヤまで、すべてのダイヤに大きな付加価値を与えることは間違いありません。

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Bonas Groupがサリネの「ダイヤモンド・ジャーニー・トレーサビリティ」プログラムを採用しました。このインパクトについて教えてください。また、このプログラムは他社の「ダイヤモンド原産地」レポートとどう違うのでしょうか。

トレーサビリティの重要性に気付いた多くの生産者や入札代理店がサリネのトレーサビリティ・エコシステムに参加しています。「原産地」レポートで分かるのは、鉱山から消費者にいたる過程の最初の一歩に過ぎず、それ以降の加工プロセスは無視されます。「サステナブルなダイヤモンド」を主張したいなら、原産地だけでなくパイプラインの始まりから終わりまでを把握できなければなりません。ダイヤモンド・ジャーニー™・レポートの最大のメリットは生産過程で取得される検証可能なデータに基づいた高い信頼性にあります。虚偽の申告やごまかしが疑われる一部のソリューションと異なり、ダイヤモンド・ジャーニー™ならダイヤモンドの生産・製造施設で使用されているサリネのシステムが取得したデータを使って鉱山から消費者にいたるパイプラインを遡ることができます。また、年間1億個以上のダイヤモンドを処理する中流の既存インフラが実質的なベースになっているため、プログラムの導入に追加費用がほとんどかからないことも大きなメリットです。これは費用対効果の高い選択肢としてトレーサビリティの利用拡大を後押ししています。実際、ダイヤモンド・ジャーニー™を導入したことでBonus Group傘下の一部の原石生産者はサリネのエコシステムに気軽に参加できるようになります。


サリネが提供しているAIベースの全自動鑑定システムのメリットと業界に与えるインパクトについてお聞かせください。

ダイヤモンド・パイプラインにおいて鑑定は重要な要素ですが、過去20年にわたって「鑑定には生産プロセス全体に匹敵するコストと時間がかかる」という事実にはほとんど変化がありません。この一見首をひねるような現状には手作業による鑑定の限界、つまり時間とコストがかかり、一貫性がないという事実が投影されています。高度な画像認識技術とAI技術に基づく代替テクノロジーが生まれた背景にはこのような不合理がありました。恐らくこの新しい鑑定技術が数年後には手作業によるダイヤモンド鑑定に取って代わるでしょう。サリネは5年ほど前にカラーとクラリティを自動鑑定する第一世代のダイヤモンド鑑定技術を発表し、それ以来鑑定のコア技術を改善し続けています。そして、ようやく次の革新的なステップに踏み出す準備が整いました。それが「e-Grading™」です。この新しいアプローチにより、ダイヤモンドを鑑定ラボに送付することなく、自社で最先端のテクノロジーを使って鑑定を行えるようになります。小さな変化に映るかもしれませんが、鑑定サイクルが大幅に短縮されると同時に、レポートの直接的なコストを大幅に減らし、輸送、保険、資金調達などの間接的なコストをカットすることができ、さらに鑑定の精度と一貫性を高めることもできます。2022年はブシュロン(ケリンググループ)がハイエンドブランドとして初めてサリネのAIベースの4C鑑定とダイヤモンド・ジャーニー™のトレーサビリティ・レポートを採用したニュースで幕を明けました。サリネのAI鑑定はダイヤモンド鑑定をより早く、安く、正確かつ一貫性のあるものに変え、完全にデジタル化します。これは、まさに今日の消費者が求めているものであり、メーカーと小売店の双方にとってプラスになるはずです。

2021 blog Diamond Journey Traceability 2 (2)

 


アンゴラなどアフリカ南部やドバイを中心とした中東への業務拡大についてお聞かせください。

現地のベニフィシィエーション・プログラムにより、アフリカのダイヤ産出国での活動が活性化するなど、現地のダイヤモンド産業の情勢は刻々と変化しています。ダイヤモンドによる地域経済の活性化を狙う各国の政府の方針と相まって、この傾向は今後さらに強まるでしょう。当社は過去10年にわたってアフリカ地域のクライアントのために強力なインフラ構築に取り組んでおり、アンゴラのような発展途上国でその活動を継続しています。つい最近も、サウリモで開催された国際ダイヤモンド会議に出席し、ダイヤモンドの生産でテクノロジーが担う役割の重要性について議論してきたばかりです。一方ドバイはここ数年で世界最大の原石取引所に成長し、ダイヤモンドの取引でも重要な拠点となっています。その立地や優れたインフラ、ビジネス環境は、原石だけでなく、ダイヤモンド取引のハブとしての条件をすべて備えています。サリネは、2020年のアブラハム合意の調印からわずか1か月後にイスラエル企業の中でいち早くドバイに飛び、現地でGalaxy®のサービスセンター運営に関する協定を結び、ドバイのデジタル入札を支援するサービスを提供してきました。

 

最後に合成ダイヤモンド市場の成長についてお聞かせください。サリネは、この分野へのさらなる投資や技術ツールの導入を計画しているそうですが、その内容について教えてください。

合成ダイヤモンドはすでにダイヤモンド産業にとって不可欠な存在となっており、今後数年間は成長し続けるでしょう。合成ダイヤと天然ダイヤの間に明確な線引きがある限りこの2つは共存できると思います。アーガイル鉱山が閉山され、目下、大規模なダイヤモンド鉱山の稼働が見込めない中、合成ダイヤが特に低価格帯の天然ダイヤの供給減によって生まれる空白を埋めてくれると期待しています。合成ダイヤが広く受け入れられるようになったことで、新たなビジネスチャンスも生まれています。サリネのテクノロジーの大半は合成ダイヤにも応用可能で、今年は合成ダイヤの価格帯に特化したGalaxy®インクルージョン・マッピング・サービスの提供も予定しています。ほかにも、Quazer® 3はすでに合成ダイヤの加工において最も費用対効果の高いレーザーシステムとして大手生産者やメーカーで広く利用されており、小売店向けの新しいサービス「サリネ・ダイヤモンド・ジャーニー™」は責任ある製造を記録して、消費者に対してそのストーリーを伝えることができます。また、AIベースのe-Grading™はとりわけ合成ダイヤの鑑定と相性が良く、今日の一般的な鑑定よりも手頃な費用で合成ダイヤを鑑定することができます。

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