ダイヤモンド業界の展望 2024:主要トレンドと消費者需要の推移

2024年を輝かせるために知っておくべきトレンド、マーケティング戦略、最先端のイノベーションをまとめたダイヤモンドの業界関係者向けのロードマップを作成しました。

パート1:ダイヤモンドとファイン・ジュエリーのトレンド予測

サステナブル・ラグジュアリー:ミレニアル世代とZ世代が需要を主導する

2024年は「サステナビリティ(持続可能性)」が単なる流行を超えた大きなうねりとなってダイヤモンド業界を前進させるでしょう。環境意識の高い消費者、特にミレニアル世代 / Z世代によるエシカル(倫理的)なダイヤモンドのニーズが高まる一方で、業界は日々進化するサステナビリティ関連法への対応にも迫られています。

欧州グリーンディールはエコデザイン指令やコーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CS3D)など、近い将来に導入が見込まれる厳格な規制を打ち出しており、各企業は環境に配慮したポリシーを実践することが期待されています。重要なのは、こうした法規制の改正によってデジタル製品パスポート(DPP)からバリューチェーン全体における環境や人権に対する説明責任に至るまで、企業には徹底したコンプライアンスが求められるようになったことです。 

このような大きな変化に直面している業界では、流れに身を任せるだけではなく、変化の波に飲み込まれないように迅速に行動することが重要です。責任ある採掘、エシカルな調達、透明性の高いダイヤモンドデータの提供を掲げるブランドは、意識の高い消費者にアピールできるだけでなく、法規制の要件を満たすことで消費者の好みと当局の規制との間でうまくバランスを取ることができます。

サリネの検証可能なトレーサビリティ・ソリューションを採用した仏高級メゾン、ブシュロンのエレーヌ・プリ=デュケーヌCEOは「サステナビリティの重要度は高まっており、ビジネスを行う上で不可欠なものになっている」ことを強調し、「特にラグジュアリー業界では、サプライチェーンや事業を運営することで生じる影響を考慮せずにビジネスを行うことは不可能だ」と述べています。

エレーヌ氏はまた消費者が視覚的にインパクトのある形で自分の石について知ることができる意味を高く評価しており「ダイヤモンド・ジャーニー・レポートがあれば、宝石が採掘されてから研磨されるまでに辿ってきた道のりをお客様に提示することができる」と述べています。


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Attrē Jewelryのトレーサブル・コレクション (サリネの提供するエンドツーエンドのAIダイヤモンド・トレーサビリティ・ソリューションを採用)

 

ラボグロウン・ダイヤモンドの需要が高まる

天然ダイヤモンドに代わるサステナブルかつリーズナブルな選択肢としてラボグロウン・ダイヤモンドへの関心が高まっていますが、2024年はテクノロジーの進歩によって品質と多様性がさらに向上し、エシカルで財布に優しいものを求める人々にとってますます魅力的な選択肢になるでしょう。

急速な都市化、価格下落、各種業界からの需要増、活気あるジュエリー市場、エシカルな選択肢を求めるミレニアル世代など、さまざまな要因を背景に世界中でラボグロウン・ダイヤモンド市場が活況を呈しており、Brainy Insights社は現在の市場規模(108億ドル)は2032年までにはほぼ倍の206億ドルに達すると予測しています。

 

複数石の婚約指輪ブームが続く

婚約指輪はソロよりもシンフォニーを。2024年は二人の愛の証に個性的な婚約指輪を求めるカップルが増えるかもしれません。ミーガン・フォックス、マシン・ガン・ケリー、エミリー・ラタコウスキー、アリアナ・グランデなど多くのセレブが「トワ・エ・モワ」と呼ばれる複数の石をあしらった婚約指輪を選び、そのトレンドを牽引しています。奇抜な配置やセンター・ダイヤモンドとの並置など、さまざまな形に置かれた石は単なるアクセサリーを超えた華麗さと個性を表現する唯一無二の愛の証になります。このトレンドは「私たちらしさ」を探すカップルの間で盛り上がりを見せており、創造性のダイナミックなキャンバスにさまざまな宝石を散りばめることで特別感を演出することができます。 

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Getty Images

クワイエット・ラグジュアリーが台頭する

2023年の半ばを過ぎた頃から脚光を浴び始めたクワイエット・ラグジュアリーが2024年を通してスポットライトを浴び続けるでしょう。これらのアイテムは、ミニマルなデザイン、天然パール、流行にとらわれないレイヤード・ネックレス、控えめなブランドロゴ、そして飽きの来ないステートメント・リングなど、派手なデザインとは一線を画し、気品があり、洗練されたクラフトマンシップを特長としています。

現代社会では目の肥えた消費者は、時代に左右されない洗練された美しさを渇望しており、丁寧なディテールと一部の隙もないデザインに魅力を見出しています。ダイヤモンド・ジュエリーの分野ではクワイエット・ラグジュアリーが特別さと個人的なつながりを体現していますが、2024年はその微妙なニュアンスを通じて雄弁に物語るダイヤモンドの控えめで普遍的な魅力に対する評価が急上昇するのを目の当たりにするでしょう。

 

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415日にロサンゼルス(米カリフォルニア州)で開催されたBreakthrough Prize授賞式に出席したリリー・コリンズ氏の指元で輝くリング。 Taylor Hill / Getty Images

 

革新的なダイヤモンドのカット / シェイプ

2024年のダイヤモンドのカットとシェイプは伝統と革新が注目を分け合うことになるでしょう。今までにないカッティングで限界に挑戦するデザイナーたちは古典と現代を融合させた作品を生み出しています。六角形や楕円形などユニークな形状をしたダイヤモンドが消費者の注目を集めるでしょう。

 

カスタマイズとパーソナライズ

自分だけのジュエリー体験への欲求がカスタマイズの需要を後押ししています。2024年は自分のストーリーを伝えたい消費者によって、エッチング、誕生石によるアクセント、オーダーメイドのデザインが人気を集め、自分らしさを表現することが高級ジュエリー市場の重要なトレンドになるでしょう。

 

スマートなテクノロジーを取り入れたジュエリー

テクノロジーとクラフトマンシップの相乗効果で生まれるジュエリーが2024年の注目を集めそうです。フィットネス・トラッキング、GPS、通知などの機能を備えたスマート・ジュエリーが日常生活とシームレスに統合されているのは良い例です。機能性と装飾性の融合によって2024年はモダン・ラグジュアリーの動きが加速し、ブランドの差別化を図るチャンスが生まれるでしょう。 

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パート2:2024年のマーケティング戦略


デジタルの支配が続く

2024年もデジタル・マーケティングは引き続き業界戦略の主役であり、特にミレニアル世代 / Z世代を狙ったものが主流になるでしょう。デジタルに精通したこれらの消費層を取り込むために、各ブランドは没入型のオンライン体験やソーシャルメディアを活用したインフルエンサーとのコラボレーションなどインタラクティブなコンテンツを提供しています。クラフトマンシップの舞台裏を紹介するインスタグラムのストーリーやバーチャルな試着体験などのデジタル環境はそのような世代とつながるための極めて重要な戦場になっています。

ストーリーテリングとブランド・ナラティブ

現代の消費者は製品だけでなく、それにまつわるストーリーや体験も一緒に購入しているため、ブランド・ナラティブの構築が2024年にマーケティング戦略を成功させる鍵を握るかもしれません。自社の価値観、クラフトマンシップに関するストーリー、エシカルな取り組みについて効果的に伝えられるブランドが消費者とより深くつながれることは明白です。

ダイヤモンドの小売業者が現代の消費者を惹きつけ、天然ダイヤモンドの持つサステナブルなストーリーを伝えるために活用できるもののひとつが、Lovie Awardsの最優秀デザイン部門で金賞を受賞したDiamond Journeyウェブサイトです。 

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「自分らしさを保つ」ためのSNS 

BoF-McKinsey State of Fashion 2024 エグゼクティブアンケートによると、インスタグラムのエンゲージメント率は2022年には前年から約30%低下し、投稿のリーチも減少しています。長年にわたる新製品の発表やプロモーションを消費し続けた結果、消費者は従来のインフルエンサー型マーケティングに辟易し始めていますが、その一方でTikTokは信頼できるプラットフォームとしての地位を築いています。

2023年3月の調査によると、米国の成人がインスタグラムに費やす時間は1日平均30分強に過ぎませんが、TikTokの使用時間は平均56分近くに達していることが分かりました。インスタグラムにリール動画機能の導入を余儀なくさせたTikToの成功は、ユーザーが投稿に費やした時間や再訪問率などの指標を重視し、コンテンツをどのように発掘するかをベースにしています。  これにはフォロワー数の多少に関係なくクリエイティブで面白いコンテンツを作ることができれば、幅広いオーディエンスにリーチできるという特長があります。 

 

サステナビリティをマーケティングの支柱に据える

「サステナビリティ」は単なる製品の一側面を超えてマーケティング戦略の中心的なテーマとなりつつあります。エシカルな調達、責任ある業務、環境に優しい取り組みへの熱意を示すことでサステナブルなイメージの構築を狙うブランドは、サステナビリティをマーケティングの支柱に据えようと取り組んでいます。このようにサステナビリティに対するコミットメントを効果的に伝えることで、環境意識の高い消費者と深いつながりを構築し、2024年を通じて既存顧客のロイヤリティを確保し、新規顧客を呼び込むことができます。

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パート3:未来につながる技術トレンド

2024年はAIとブロックチェーンの透明性で消費者の信頼を獲得

ダイヤモンド業界は特にミレニアル世代 / Z世代の消費者の信頼を勝ち取るために、AIとブロックチェーン技術の戦略的な統合を進めています。これらのイノベーションを活用することで、小売業者は鉱山からマーケットに至るダイヤモンドの道のりを詳細に記した透明性の高い記録を消費者に提供することができます。

この先進的なアプローチは、QRコードやオンライン・プラットフォームによるダイヤモンドの真正性やエシカルな調達先の確認など、テクノロジー主導のソリューションを好むミレニアル世代 / Z世代の消費者の要求に応えるものです。テクノロジーを活用したトレーサビリティ・システムへの移行は正確性を担保するだけでなく、自動化されたデータ主導のプロセスに対するミレニアル世代 / Z世代の信頼にも応え、その背後にある倫理的な配慮や透明性を強化します。このようにテクノロジーの戦略的統合は、消費者に信頼感を与えるだけでなく、小売業者を倫理的リーダーとして位置づけ、競争の激しいマーケットでテクノロジーに精通した倫理意識の高い消費者の期待に応えるための武器になっています。

2024年は次のようなダイヤモンド・トレーサビリティ・ソリューションを活用することで、ミレニアル世代 / Z世代のニーズに応えることができるでしょう。

  • サリネのAIダイヤモンド・ジャーニー™・トレーサビリティ:ダイヤモンド技術の世界的リーダーであるサリネは、大粒のダイヤモンドとメレダイヤモンドの両方を扱う世界初のAIダイヤモンド・トレーサビリティ・ソリューションのパイオニアであり、ダイヤモンドの真正性の保証に留まらず、鉱山からマーケットに至る全体的なプロセスを明らかにします。また、高度な3Dイメージングは原石が研磨を経て店舗に並ぶまでのダイヤモンド固有の変化を鮮やかに描き出します。

  • デビアス、サリネ、Tracr によるG7向けトレーサビリティ・システムの取り組み:デビアス、サリネ、Tracrは共同でブロックチェーンとAI技術を活用したエンドツーエンドの透明性 / トレーサビリティの促進に取り組んでおり、倫理意識の高い消費者の期待に応えるために、ダイヤモンドのライフサイクル全体を通して、個体ごとの特性を記録したデジタル証明書を発行しています。このパートナーシップはエシカルな調達のための業界のベンチマークとして最先端のトレーサビリティを通じた信頼構築に一役買っています。

  • Auraブロックチェーン・コンソーシアムとサリネのトレーサビリティ・プラットフォーム: Auraブロックチェーン・コンソーシアム(LVMH、プラダグループ、リシュモン傘下のカルティエ、OTBグループによって設立)は、AuraプラットフォームにサリネのDiamond Journey™トレーサビリティ・ソリューションとデータを統合し、サプライチェーン全体でダイヤモンドの完全なトレーサビリティを提供しています。このプラットフォームはビジネスの規模を問わず利用可能であり、パブリックとプライベート双方でブロックチェーン・ソリューションを利用する機会を提供するもので、顧客との信頼関係を築き、新たな体験に参加できる空間を作り出すことができます。 

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AIによる自動ダイヤモンド鑑定

AIによる鑑定の時代に足を踏み入れ、イノベーションと効率性の融合でダイヤモンドのバリューチェーンを再構築し、製造・小売業者のコストの削減と収益拡大を実現しましょう。伝統的なダイヤモンド鑑定にAIと機械学習という最先端の技術が融合した未来には鑑定士の姿はありません。そこで行われているのはシームレスで自動化されたダイヤモンド鑑定です。現場に導入できる世界初のAIダイヤモンド鑑定システムは業界に大きな波紋を広げるはずです。ダイヤモンド・メーカーは生産効率を最適化し、小売業者の要望や消費者のトレンド / 需要の変化に合わせて研磨計画を迅速にアジャストすることができます。また生産段階に鑑定が組み込まれることで、ダイヤモンドのサプライチェーンは短縮され、コストのかかる鑑定の外注が不要になり、より費用対効果に優れたパイプラインを構築することができます。

新たな4Cとは従来のパラメーターが再定義されただけのものではなく、未知の領域にも踏み込み次のレベルの透明性を消費者に提供するものです。このようなAI主導の環境にあれば、どんなダイヤモンドでもストーリーを語り、日ごとにそのストーリーがより鮮やかで正確に、そして魅力的になっていきます。

 

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AIを活用したパーソナライゼーションでブランドの本質を再発見する

オーダーメイドは長い間ラグジュアリーの代名詞でした。個人の要望や好みに合わせた細かいカスタマイズほど顧客の心をつかむものはありません。

2024年に向けてパーソナライズは新たなピークに達するでしょう。人工知能と機械学習は消費者データを掘り下げ、高度にパーソナライズされ買い物体験を提供するブランドにとって欠かせない役割を担うようになっています。オーダーメイドの商品提案であれ、店内限定のサービスであれ、2024年の高級小売店は、すべてのやりとりが「あなたのためだけのもの」という特別感の演出に専念するようになります。

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2024年に向けて

地政学的、経済的な逆風が吹き荒れているにもかかわらず、業界のリーダーや経営陣たちは新たな変革の旅の準備を着々と進めています。幸い私たちにはテクノロジーがあります。大手企業はAIとデジタル・ソリューションの革命的な可能性を信じて、柔軟性を強化しながら課題に正面から立ち向かおうとしています。揺るぎない決意で逆風に立ち向かいながら、チャンスが訪れる瞬間を虎視眈々と狙っているのです。サリネとともに逆境をチャンスに変えて2024年を成果と革新の1年に変えましょう。

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