COVID-19がもたらしたダイヤモンド業界のデジタル・AI化

未来の歴史学者にとって2020年は、感染拡大やロックダウン以上の意味がある年となるでしょう。それは、日常生活の数多くの要素が、デジタルへの永久的な移行を遂げた年だからです。

たとえば、COVID-19感染拡大中には、オンラインショッピングが大ブームとなりました。2020年9月には、米国内におけるeコマースの売上高が43%急増。ダイヤモンド業界を含むあらゆる業界・部門にその影響が及びました。

ラパポート(Rapaport)によると、7月31日からの3カ月間に、Tiffany & Co.(ティファニー)のeコマースの売上は123%上昇。一方、シグネット・ジュエラーズ(Signet Jewelers)の8月1日までの四半期のオンラインの売上は72%増加しました。

では、COVID-19後のダイヤモンド業界の見通しはどうなのでしょうか。Sarineのデイヴィット・ブロックCEOは、消費者需要次第と見ています。市場の回復方法や回復時期は、ダイヤモンドの購入を特に好む人々の行動に左右されます。現時点では、東南アジアに特に勢いがあり、売上を伸ばしています。米国の休暇シーズンも目下の注目ですが、これは経過を見る必要があります。

これらについては、The New Jeweller International Media Group主催のパネルディスカッション『Technology Grading & Education: A New Paradigm』で、ブロックCEOがより詳しく説明しています。

動画を見る

 

以下では、原石プランニングから消費者の嗜好に合ったストーリーテリングに至るダイヤモンドの軌跡や、テクノロジーAIの活用を通した既存サービスの強化について、わかりやすくまとめています。

 

あらゆる場所にテクノロジーが活かされたダイヤモンド供給ライン

ダイヤモンド業界では、鉱山から消費者に至る供給ラインでテクノロジーが常に重要な役割を果たしてきました。しかし、COVID-19の世界的な感染拡大により、デジタルテクノロジーに基づくソリューションの必要性がこれまでになく明確になったのも事実です。

たとえば、ブロックCEOは、2019年10月にALROSA(アルロサ)とSarineにより立ち上げられた原石取引用デジタルプラットフォームについて触れています。

感染拡大により対面による原石取引が不可能となったことで、本プラットフォームの利用が大幅に拡大しました。これは、会議や出張がZoomに移行したのと同じ現象で、デジタルテクノロジーへの移行により、ダイヤモンド業界には途方もない利益がもたらされてきました。

ダイヤモンド供給ラインのより一層の発展に向け、技術を活用できる余地は十分あります。B2B分野では、より効果的なサプライチェーンの整備により、生産者による効率化やサービスの向上を実現できます。消費者レベルでは、COVID-19により購入行動に根本的な変化がもたらされたのは明らかで、今後の行く末を注意深く見守っていく必要があります。

画像化アプリの開発業者Vertoとの連携は、小売業者によるスマートフォンでの正確なジュエリーの3D画像撮影を可能にする、ゲームチェンジャーの一つです。今日の消費者は、店頭を訪れることなくジュエリーを見たり試着したりできることを当然に思っています。小売業者によるそうした体験の提供を実現できるのは、高性能なAI技術だけです。

 

ニューノーマルとしてのAIグレーディング

ダイヤモンドグレーディング分野は、AI技術革命の重要分野です。過去50年以上にわたり手作業で行われてきたこの工程は、ダイヤモンド産業の大きなデメリットとなってきました。

SarineのブロックCEOによれば、グレーディングはグレーダーの経験や知識に左右される、グレーダーの主観を免れない作業です。2017年に立ち上げられたSarineの世界初のAIグレーディング技術は、人間のグレーダーの行動をより高い精度・一貫性・効率性で再現できる機械学習システムで、従来のグレーディングを一新させています。

更に、AI技術によりダイヤモンドグレーディングが研究所の閉鎖された空間から脱出できることで、ダイヤモンドグレーディング革命が次の段階となるeGrading™(原産地グレーディング)に進むと、ブロックは見ています。将来的には、メーカー、小売業者そして消費者による、場所を問わないダイヤモンドグレーディングが実現するでしょう。

原産地でのグレーディングが可能になることで、外部の研究所にグレーディングを依頼する必要がなくなり、輸送費用はもちろん輸送に伴う保険料などその他の経費も節約できます。これにより、供給ラインコストと時間の両方を削減できます。これらすべての利点およびAIの一貫性や精度を踏まえれば、人間によるグレーディングから自動グレーディングへの劇的な移行が、今後数年以内に起こるとブロックCEOは予想しています。

 

グレーディングの規格化に向けた取り組み

グレーディングが研究所の閉鎖された空間から飛び出すということは、データのセキュリティや信頼性がこれまで以上に重要となることを意味しています。そのため、Sarineの研究・開発チームは、データ操作防止機能の開発を通したグレーディング工程の自動化への対応に、ここ数カ月間にわたり全力で取り組んできました。これにより、妥協のないダイヤモンドデータや、自動グレーディングの信頼性が確保されます。

規格化は、ダイヤモンドのグレーディングに関するもう一つの重要な課題ですが、これはテクノロジーだけでは解決できない問題だとブロックは述べます。最善かつ最も適切な基準に業界全体が合意できるには、有意義な対話が必要とされるからです。

Sarineは、グレーディングの規格化という夢を実現できるに十分な技術が熟しており、それにより業界全体に計り知れないほどの利益がもたらされるという見方をしています。こうした見解は、30年前に立ち上げられたSarineのDiaMension®カットグレーディング技術にも反映されています。このカットグレーディング装置は今日、メーカーから卸、小売業者に至る世界中のあらゆる場所で、信頼できるカットグレーディングの実現に役立てられています。色や透明度のグレーディングに関してもこれを実現する必要がありますが、テクノロジーだけでの実現は不可能です。それには、業界全体による進歩と、課題への対応が必要とされます。

 

COVID-19による、ダイヤモンド業界におけるテクノロジーソリューション導入の加速

過去9カ月にわたり、原石取引業者からメーカー、小売業者、消費者に至るダイヤモンド供給ラインの関係者が、デジタルソリューションの非常に高い可能性をCOVID-19を通し実感してきました。デジタル化はCOVID前も進められていましたが、感染拡大によりその速度は急速に加速しました。今後も、こうした機運の維持や業界全体がAI化に一丸となり取り組むことで、より高い効率性・精度・一貫性・信頼性を実現していきます。