2025年のダイヤモンド業界を予測する

2025年のダイヤモンド業界を予測する

2024年はG7によるダイヤモンドの輸入規制が業界を揺るがし、世界のダイヤモンドサプライチェーンに大きなインパクトを与えました。

また、ラボグロウン・ダイヤモンドの売上げが急増し、ソルト&ペッパー・ダイヤモンドのような個性的なダイヤモンドに注目が集まったり、インドが天然ダイヤモンドの消費量で中国を抜き米国に次ぐ世界第2位の市場に成長したりするなど世界的なトレンドも大きく変わりました。

ダイヤモンドのパイプラインに携わるすべての人々には毎年のように新たな課題が生まれています。そこで今回は注目の話題やトレンドを深掘りし、2025年のダイヤモンド業界を占ってみます。

 

天然ダイヤモンドの物語が再構築される

20世紀半ば以来、天然ダイヤモンドは贅沢、愛、そして約束の象徴でした。それは高価であるというだけでなく消費者の感情を揺さぶる力を持っていたことも意味します。

近年、天然ダイヤモンドはより手頃なラボグロウン・ダイヤモンドとの価格競争で苦戦を強いられていますが、ダイヤモンドのひとつひとつが持つ独自の物語の力を侮ることはできません。2025年は天然ダイヤモンドの輝きが再燃し、消費者の共感を呼ぶ新たな物語が生まれることでしょう。

 

このトレンドは特定のブランドや小売業者だけにとどまるものではなく、天然ダイヤモンドのイメージ回復を願う業界全体のニーズを反映しています。202411月に開催されたドバイ・ダイヤモンド会議でNatural Diamond Councilのデビッド・ケリーCEOが述べたように「業界全体が一丸となって天然ダイヤモンドの物語を広める努力を後押しする」ことが求められています。

 

また、同会議でデビアス・グループのアル・クックCEOが掲げた「新世代の大胆な消費者に刺さる大胆な手法」を実現するために、ダイヤモンド業界のリーダーたちは天然ダイヤモンドのカテゴリマーケティングを支援する業界全体の基金を設立することに合意しました。

 

2025年の天然ダイヤモンドの物語には持続可能性と倫理的実践というもう1つの重要なサブストーリーもあります。今日の消費者はより責任あるダイヤモンドの調達・製造を求めるようになっており、ダイヤモンドの原産地を追跡可能な形で記録し検証する必要性が高まっています。DMCC(ドバイ)で開催された『コンプライアンスを超えて - ESG規制がダイヤモンドに与える影響』と題したセッションでは、専門家パネルが現代消費者の価値観に共鳴するストーリーを業界としてどのように再構築できるかについて熱い議論を交わしました。ダイヤモンドのパイプラインに透明性とストーリー性を組み込むことでダイヤモンドの魅力を回復させ、新たな高みへと昇華することができるでしょう。

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信頼と透明性が求められる 

DMCCOriginAll S.A.の共同設立者であるマーゴット・スチュアート氏が「業界の透明性を求める圧力がある。信頼には裏付けが必要だ」と述べたように、ダイヤモンドの原産地から製造、鑑定に至るプロセスの「透明性」は消費者の信頼を得るために不可欠です。2025年は消費者がダイヤモンド小売業者に対してより多くの裏付けと透明性を求めるようになるでしょう。そして、それを提供することがメーカーや小売業者の最大の焦点になります。

消費者に「透明性」を提供し「信頼」を築くための手段は多種多様です。 

  • 鑑定プロセスに関する情報を発信する
  • ダイヤモンドのトレーサビリティを生産システムに組み込む
  • 持続可能性な実践を徹底し、その価値を消費者に伝える
  • 革新的な鑑定技術を持つ第三者のダイヤモンド鑑定を導入する

2025年にダイヤモンド業界のプレイヤーたちはより透明で信頼できる存在になるために、このような取り組みを加速させていくでしょう。



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高級ジュエリーのパーソナライズとカスタマイズ

消費者は自分だけの個性や気分を反映したパーソナライズされたデザインを好むようになっており、カスタマイズ・ジュエリーの需要は増加の一途をたどっています。このトレンドはジュエリーを自己表現の一つと考えるZ世代の消費者に特に顕著です。

幅広いカスタマイズ・オプションを提供できるブランドは、パーソナライズされたデザイン需要の追い風を受けることができるはずです。このトレンドは特にハイエンド・ジュエリーの分野で顕著です。ブランドは有名デザイナーたちと協力し、自分らしさを演出できる「オンリーワン」のデザインを提供することで消費者のニーズに応えようとしています。

 

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ラボグロウン・ダイヤモンドとファンシーシェイプの躍進

2030年には合成ダイヤモンドが世界のダイヤモンド販売量の10%を占めるという予測があるように近年、ラボグロウン・ダイヤモンド(LGD)の需要が高まっています。

今後もこのトレンドが続くかどうかは不明ですが、一部の小売業者は需要が増加する一方でLGDの価格が下がっている、つまり、LGDの販売数は伸びているものの、その全体的な売上げが変わっていないことを指摘しています。

2025年にはLGD市場はより多様化し、より多くのファンシーシェイプが市場に登場し、それらの製品に対する需要も高まるでしょう。このような流れを受けて、LGD向けの鑑定技術はさらに発展・洗練され、高品質なダイヤモンド・レポートを通じて販売を支えることが期待されます。

 

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トレーサビリティの要求が高まる

2024年のドバイ・ダイヤモンド会議では原産国問題についてさまざまな意見が噴出しました。『苦境に立つダイヤモンド業界』と題されたセッションでは、壇上の専門家たちが地政学的な緊張、景気減速、サプライチェーンの困難など、今日業界が直面している問題について掘り下げました。「鉱山から採掘されるダイヤモンドにはトレーサビリティが不可欠だ」という新たな主張は鉱山業者や製造業者に対してトレーサビリティの必要性を強く訴えています。

2025年以降はサプライチェーン全体にわたってエンドツーエンドのトレーサビリティが求められるようになるでしょう。BoFBusiness of Fashion)の最新レポート『ファッションの現状2024』によると、ファッション業界はすでにサプライチェーンのトレーサビリティに向けた取り組みを行っています。ファッション業界と強い相関関係があるダイヤモンド業界もパイプラインのトレーサビリティを重視する未来に向かうことが予想されます。

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先進技術の統合

ダイヤモンドのサプライチェーンのあらゆる段階に最先端技術が導入され、パイプラインはますます洗練されています。例えば、鉱山ではダイヤモンドの採掘にX線システムが使用されており、原石を産出地で自動選別するためにSarine Galaxyなどのシステムが広く使われています。

ダイヤモンドの製造施設で使われているAIベースの自動鑑定技術は、より正確、再現可能、迅速な鑑定を可能にしており、これが消費者の需要に応じて中流から下流のパイプラインを合理化するのに一役買っています。

小売の世界ではデジタル製品パスポートが物理的なダイヤモンドとデジタルIDをリンクさせ、製品の真正性を検証し、消費者の関心と注目を引きつける没入型のデジタル体験の提供を提供しています。ほかにもダイヤモンドパーセルの登録と「デジタルツイン」の作成を自動化するサリネのAutoScan Plusで製造プロセスを通じて原石を同一のIDで追跡することができます。これらの技術はサプライチェーンを追跡するのに不可欠であり、小売業者にとってはダイヤモンド固有のデジタルIDを活用して、消費者とダイヤモンドをリアルタイムでつなげるための強力な販売ツールにもなります。

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包括的な消費者体験

過去10年ほどで消費者が期待するものは決定的に変化しました。人々は現在、ブランドが自分たちの感情的・社会的ニーズや価値観に呼応することを期待しています。製品の品質、ブランドアイデンティティ、価格だけで消費者を満足させることができた時代は終わりました。市場が飽和し、インターネットを通じて消費者がより多くのコンテンツや商品に触れることができる現代では、包括的な消費者体験へのシフトが急務になっています。この競争に勝ち残るには消費者が求める方向に進化し続けなければなりません。

買い手の個人的な人生や節目、社会的目的を製品と結びつけるストーリーテリングは消費者に没入感や共感を与え、贅沢で魅力的な体験を引き出す鍵であり続けるでしょう。

2025年に向けてダイヤモンド体験を強化して小売業のレベルアップを図りたいと考えていますか?サリネでは消費者のあらゆるニーズに対応する幅広いデジタルIDレポートなどさまざまなダイヤモンド・ソリューションを取り揃えています。

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