今回のブログは最近開催されたウェビナー「ラボグロウン ダイヤモンド101:科学、認証、市場トレンドの発見」のレポートをお届けします。『Jewellery Industry Network』のマネージング ディレクター、Laura Moore氏が企画・主催したこのウェビナーにSarineからAngelo Palmieri (GCAL by Sarine 社長)、Sharrie Woodring (GCAL by Sarine シニア宝石鑑定士)、Noy Elram (Sarine APAC マネージング ディレクター) が招かれ、ラボグロウン (合成) ダイヤモンドを取り巻く現状について意見を交換しました。以下ではウェビナーの概要をお伝えします。
ラボグロウン (合成) ダイヤモンドの歴史
ウェビナーは合成ダイヤモンドの歴史をまとめたSharrie Woodringのプレゼンで幕を開けました。合成ダイヤモンドのアイデアが生まれたのは100年以上前のことですが、ここ20年ほどで本格的に普及が始まり、以来その品質は年々向上しています。2023年現在でも改良が続いており、これらの宝石に対する関心はかつてないほど高まっています。
CVDか、HPHTか
合成ダイヤモンドの製造方法にはCVD(化学蒸着法)とHPHT(高温高圧法)があります。それぞれに特徴と長所・短所があり、出来上がるダイヤモンドを決定付けています。
• CVD(化学蒸着法)
CVD法はダイヤモンドを気体状態から層状に成長させる方法で、天然ダイヤモンドに近い色合いを持つ大きな原石を製造することに特化しています。まずダイヤモンドの種結晶を炭素が多く含まれるガスを充填した真空容器に入れて1,500°C近くまで加熱します。この急激な温度上昇によって炭素原子がプラズマ化し、それがダイヤモンドの種結晶に結合して成長します。
CVD法で製造された石をじっくり観察するとダイヤモンドが層状に成長した痕跡を確認できます。結晶内にはしばしば製造方法に由来するクラウドやフォグなどの内包物が残るのも特徴です。
• HPHT(高温高圧法)
HPHT法はCVD法よりも安価に導入でき、メレダイヤモンドに適した製造方法です。容器をおよそ1,600°Cまで加熱して1平方インチあたり87万ポンド(およそ40万kg)以上の圧力がかかるとダイヤモンドの生成プロセスが始まり、熔解した金属によって高純度の炭素が溶け、炭素原子が小さなダイヤモンドの種結晶の上で成長し始めます。
製造されたダイヤモンドはわずかに黄味がかっており、鉱物性の濃い内包物が含まれることもあります。
合成ダイヤモンドのトレンド
Angelo Palmeriは合成ダイヤモンドのトレンドについて解説しました。2020年以降、合成ジュエリー、特にその実験的な可能性のレベルが高まったという点で状況は大きく変化しました。かつてはラウンドシェイプの独壇場でしたが、今ではファンシーシェイプの需要が急増しており、宝石鑑定保証研究所 (GCAL) のカタログでラウンドシェイプは少数派となっています。
合成ダイヤモンドでは特殊な形を製造することもできます。映像ではテキサス州とテディベアの形をした美しいダイヤモンドを確認することができます。
こうしたトレンドは、高級ブランドの多くがダイヤモンドの研磨やカットに細部までこだわっていることと密接に結びついています。これはまた、業界の最先端を行くAIベースの製造ソリューションを大量に採り入れている製造業のトレンドに伴うものでもあります。クラリティやカラーも改善しています。合成ダイヤモンドではクラリティがIF~I3の間で等級付けされますが、CVD法とHPHT法で製造されたものはVS1またはVS2に分類されることが多いようです。
中国の合成ダイヤモンド市場
Noy Elram (Sarine APAC マネージング ディレクター) は中国で拡大を続ける合成ダイヤモンド市場について紹介しました。合成ダイヤモンドに関しては中国が世界の総生産の30%を占め、その額は4億ドルに上る一方で、消費者ベースでは合成ダイヤモンドの小売消費量の5%を占めるに過ぎません。しかし、大きな変化が起こりつつあります。
中国では現代の消費者を特に重視し、かなり未来的なアプローチによる合成ダイヤモンドの売り込みが始まっています。2023年にChina Goldが発表した、合成ダイヤモンドの小売店を1,000店舗オープン予定というニュースは市場の移り変わりを顕著に表しています。これは、もちろんDEINOやLight Markなど数年前に合成ダイヤモンドを受け入れた小売大手とは別の話です。
まとめ
現在世界中に与えている影響力の大きさと実験的な試みを許容する柔軟性を考えれば、今後数年のうちに合成ダイヤモンドの輝きがさらに増すことが予想されます。間違いなく現代は業界のすべての関係者にとってとてもエキサイティングで革命的な時期であり、合成ダイヤモンドはその大きな部分を占めているといえるでしょう。
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