年末が近づくとSNSのニュースフィードやメールの受信箱は翌年のトレンドや予測についての記事であふれかえります。
とはいえ、2021年ほどニューノーマルの見通しや来年のラグジュアリーの定義について考え抜いた年はないかもしれません。
この資料ではダイヤモンド業界の長期にわたる変革の中でも特に注目すべき変化や、2022年を迎えるにあたって知っておきたいトレンドやバズワードを紹介します。
ダイヤモンドを購入する際の判断材料として「環境や社会に対する責任」がますます重要になっています。消費者の信頼とダイヤモンドへの憧れを持続させるには、人道的に調達されていることを裏付ける証拠が不可欠です。商品のサステナビリティを信頼できる独立機関が担保してくれるなら、喜んで追加費用を支払う消費者も少なくありませんが、「次世代の責任ある調達はテクノロジーによって担保される」(『The Diamond Insight Report 2021』) ことになるでしょう 。
AIを活用したテクノロジーと安全なクラウドストレージの登場によって、ダイヤモンド業界は疑いのないスケールで産地の特定や商品の追跡が可能になり、顧客が求める安心を提供できるようになりました。また、販売店はダイヤモンドの流通過程をより詳細に伝えることで、消費者とダイヤモンドの感情的なつながりを深化させ、特別で忘れがたいショッピング体験を届けることができます。この点に関しては、2022年も勢いが弱まることはなく、むしろ消費者の信頼を得るための検証可能なデータやテクノロジーを駆使したダイアモンド流通レポートが一層求められだろうと予測しています。
アクセンチュア社の「第15回ホリデー・ショッピング調査」によると、Z世代の70%が今年のホリデー・シーズンは店舗で買い物を楽しみたいと回答した一方で、意外にもベビーブーム世代は54%がオンラインで買い物をすると回答しています (『INSTORE Magazine』)。
ダイヤモンドのバリューチェーンにもデジタル化の波が押し寄せていますが、販売店舗の価値は衰えていません。例えば「オンライン販売が増え、購入前にネットで下調べすることが当たり前になっているにもかかわらず、圧倒的多数の消費者 (90~95%) は、ダイヤモンドを購入する際は実際に店舗を訪れたいと考えています」(『BAIN: The Global Diamond Industry 2020–21』 )。
ブランドや企業は消費者の価値観や購買意欲と共鳴しなければなりません。リアルでも、デジタルでも「消費者の現状と精神的・物質的な要望を満たすこと」が良質なショッピング体験を提供する上で特に重要です。婚約指輪など人生の節目のプレゼントを探している新世代の消費者にとって現代テクノロジーはより身近な存在になっており、ソーシャルメディア、アプリ、スマートフォン、メールなど、日常的に使用するあらゆるチャネルやデバイスを介したショッピングを求めています。もちろん、実際の商品に触れたいという要望はありますが、2022年は今までのような店頭販売だけでなく魅力的でインタラクティブなデジタル体験が必要不可欠になるでしょう。
デジタル体験の台頭は高級品販売店に変革をもたらしています。
これまでの品質評価は商品を直に触り、感じ、身につけ、そして実際に作り手に合うことで行うしかありませんでしたが、新型コロナのパンデミックがこの常識を根底から変えました。新型コロナの制約下でも高級感を演出するために、ラグジュアリー企業は新たなマーケティング戦略を構築し、消費者との距離を縮めるためにイノベーションをツールとして活用する必要に迫られています。
現代ではほぼすべての産業でデジタル・タッチポイントが不可欠になっていますが、ラグジュアリー消費者のためのDX (デジタルジャーニー) 実現にはさらに大きな期待が寄せられています。ごく当たり前のオンライン体験では消費者の期待に応えることはできませんが、オンライン販売で一貫した魅力を提供できれば、大きな期待を持って訪れる買い物客に強く訴えかけることができます。
デジタル・ショッピングでダイヤモンドを評価・鑑定するのに最適な方法のひとつとして大きな注目を集めているのがデジタル・ダイヤモンド・レポートです。従来の紙媒体のレポートから、ブランドや商品のイメージに合わせてカスタマイズでき、インタラクティブで見た目にも美しいデジタル形式のレポートへの移行は、保守的な業界にとって大きな前進です。
大きくて個性的なダイヤのステートメント・ジュエリーは人目を惹くだけでなく、会話のきっかけにもなります。「凝ったデザインのステートメン・ジュエリーを身につければ自信も湧いてくるはず。周囲の注目も独り占めできます」(Katerina Perez氏)。2022年は間違いなく、より大きくイてンパクトのあるジュエリーが主役のひとつになるはずです。
男性のジュエリー選びも大胆になっています。近年その動向に注目が集まるメンズ・ジュエリーですが、中でもダイヤモンドとの関係は特別なものになりつつあります。コロナ禍でうっ積した自己表現に対する飢えが、男性のジュエリー選びをより大胆にしているのかもしれません。この素敵なトレンドはしばらく続きそうです。
誰にでも似合うシャンデリア・イヤリングで顔を持ち上げて明るさをプラス。ジーンズやTシャツからイブニングドレスまでどんなスタイルにもマッチします。業界を代表する専門家たちが集まったジュエリー・コレクションでは、高貴な印象を与える天然ダイヤでこのトレンドを実に優美に表現していました。2022年も間違いなくこのトレンドが続くでしょう。
フォトクレジット:Only Natural Diamonds
Vogue誌の『Spring 2022 Jewelry Trend Report』で、ネックラインと顔に注目が集まる大型のチョーカーが復活しつつあると紹介されています。ダイヤモンドをはじめとする様々な形、大きさ、色の宝石があしらわれたチョーカーは、どの販売店にとっても必需品になるでしょう。
フォトクレジット:Dolce & Gabbana: Filippo Fior
ジュエリーの男性性と女性性の境界線はかつてないほど曖昧になっています。ここ数年、ファッション界では性別が包括的になり、レディースとメンズの境界が曖昧になるなど、劇的な変化が起きています。この変化を受けてジュエリーの世界でもジェンダーフリー・ジュエリーという新たな市場が形成されつつあります。性別にとらわれないジュエリーは2022年以降の大きなトレンドのひとつになるでしょう。
現代の消費者はこれまでにないほど豊富な知識と用心深さを備えています。ダイヤモンドの「価格」対「品質」について敏感で、その購入にはより一層の注意を払っています。Googleで「ダイヤモンド鑑定書」と入力すると、「偽物」や「信頼」といった予測変換が上位に表示されますが、これはダイヤモンド業界と従来の鑑定プロセスに対する信頼が低下していることを如実に物語っています。インターネットの普及によって人の目による鑑定の一貫性が不安視されるようになり、それが消費行動に大きな影響を与えています。
とはいえ、暗い話ばかりではありません。テクノロジーの発展は信頼低下の引き金になると同時に、信頼を回復するための方法も教えてくれました。ストリーミングTVの登場で大型のビデオレンタル店が姿を消したように、従来の鑑定プロセスもそのピークを過ぎるのは時間の問題です。ダイヤモンドの鑑定は人の目から、 Sarine eGrading™のような最先端の技術、人工知能、機械学習へと大きく変わり始めています。
世界の急激な変化は消費者の 行動にも影響を与えています。
あなたはついていけてますか?